ヒアリングとは何か? 何が出来るのか? | ヒアリング実践講座 第2回
ヒアリングは応用範囲が広い
ヒアリングの原初的な意味は“聞くこと”です。
聞くというのは非常に応用範囲が広いです。
- 調べるために行えば“調査”になります。
- 関係づくりのために行えば“信頼形成”になります。
- 営業中に行えば“ニーズとサービスのマッチング”になります。
(私の専門が新規事業におけるヒアリング調査なので)
ただし、上記の通り非常に応用範囲の広いスキルなので、色々な場面で応用が可能です。
調査の場面だけでなく、上司と部下の面談、採用面接、親子の会話、営業、電話応対、接客業、セミナー業、観光業などの場面でも使うことが出来ます。
アンケートやエスノグラフィーなど他の調査方法との違い
調査にはヒアリングの他にも調べる方法が存在しています。
アンケートやエスノグラフィー(行動観察)が著名な方法です。
それぞれの方法は特徴があり、使いどころが違うのです。
それを理解しないまま適さない場面で適さない調査方法を行ってしまう方もお見受けするのでそれぞれどのような特徴があるのか整理します。
1. アンケート
アンケートは紙や画面を使って質問に対して答える方法です。
サンプル数を多く取ることが出来る調査方法です。(数千人も可能)
基本的には単一方向性です。
リアルタイムに質問を変える事は難しいです。
質問の作り方によっては誘導が多発します。
2. ヒアリング
ヒアリングは会話による調査方法です。
サンプル数はアンケートほど取ることは出来ません。時間もお金も掛かります。
基本的には会って行う形ですが、TV電話やグループなどアレンジをきかせることが出来ます。
質問がリアルタイムに変えられるなど、双方向性があります。
こちらも誘導が多発しやすいです。
3. エスノグラフィー
エスノグラフィーとは文化人類学から発祥した調査方法です。
質問などは行わず、調査の対象者を観察し続けます。
対象によりますが数時間から数ヶ月の時間単位が必要です。そのためサンプル数は多く取れません。
質問を行わないため誘導は起こりづらいです。
IDEOなどのデザインコンサルティングファームがこの方法を行うなど新規事業づくりにおいて注目されています。
これらの特性を使い分けるとするなら、
仮説検証はアンケートが向いております。
数千のサンプルを集めることが出来るのでより確実性の高い調査が出来ます。
ただし、そもそもアンケートで何の仮説を調べるべきかはアンケートでは難しいです。
そうした仮説発掘はエスノグラフィーやヒアリングが向いています。
時間がある時や特にバイアスを掛けたくない時はエスノグラフィー。
ある程度時間が限られていたり、心情をより詳しく調査したい時はヒアリングが良いでしょう。
エスノグラフィーやヒアリングで見つけた仮説を、
最終的に検証するのにアンケートを使うのが
それぞれの強みを活かした調査になります。
ヒアリングは仮説発掘に向いている
仮説発掘とは仮説を見つけることです。
調査主体が考えた仮説がそのまま合っているなんて事はなかなかありません。それどころか、調べるべき事柄ではなかったことも多々あります。
例えば、調べればすぐダメな事業だと分かることだったとか。そもそもそんなニーズはなかったとか。
なので、仮説自体を見つける発掘作業が新規事業づくりや新商品開発には必要になります。
ヒアリングはその仮説を発掘するのに向いています。
こちらが用意してきた質問を否定されたとしても何故否定されたのかをすぐ聞き直すことが出来ます。
これによってすぐ違う仮説を見つけることがしやすいのです。
例えば、私が過去作った「ネコワーキング」の調査を参考としてお見せすると
調査者「オフィスにどんなモノがあったら良いですか?」
対象者「ねこがいたらイイ!」
調査者「座りやすいイスとか、おしゃれな空間とかじゃなく?」
対象者「そう!」
調査者「ねこがいたらどうなるのですか?」
対象者「2時間パソコンに集中した後、ソファで猫を撫でられたらもう2時間集中出来ます。」
調査者「集中力は2時間で切れるのですか?」
対象者「そうね。結構頭使う仕事だから集中し続けられない。まして8時間集中力し続けるのはムリムリ。」
調査者「休んだりは出来ないのですか?ご飯とか」
対象者「お昼だけでは休み足りないかな。」
調査者「休むとしたらどんな休み方がいいですか?」
対象者「タバコ吸う人が羨ましい時がある。ああいうちょっとした休みが欲しい。」
このやりとりで調査者はオフィスに望まれるのは“座りやすいイス”とか“おしゃれな空間”とかだろうと仮説を立てていました。
しかし、聞いてみるとぜんぜん違う答えが返ってきています。
そこで当初の仮説は無視して、その理由について深堀りしています。
ヒアリングではこうしたリアルタイムの調整や、仮説が否定されてからの次の仮説発掘がやりやすいのです。
まとめ
- ヒアリングは応用範囲が広い。
- 調査方法は得手不得手の特性を理解して使い分けるのがいい。
- ヒアリングは双方向性があり、仮説発掘が得意。