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フリーライターが知っておくべき法律「下請法」の基礎知識と交渉のコツ

フリーライターが知っておくべき法律「下請法」の基礎知識と交渉のコツ

ライターを含め、フリーランスで働く人たちは「下請法」という法律で守られています。慣例通りの違法な支払いシステムを採用している企業も少なくありませんが、この法律に関する知識を持っているだけで、交渉の場では優位に立てます。今回は下請法の内容と合わせて交渉のコツもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

下請法とは

下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」と言います。親事業者の優位的な地位の濫用行為を防止し、下請事業者の立場を守る目的で制定されました。法律上の下請事業者の中には、ライターなどのフリーランスで働く人たちも含まれます。具体的には、フリーランスが資本金1千万円を超える事業者から業務を委託された場合に、その取引は下請法の対象となります。

フリーライターに関わる下請法4項目

では実際に、親事業者にはどのような義務があり、どのような行為が禁止されているのでしょうか。今回は、下請法の中でも特にフリーライターに関わる内容をピックアップしてご紹介します。

【1】書面の交付義務

親事業者は、委託日や発注内容、支払条件などの必要事項を漏れなく記載し、書面として交付する義務を負っています。また、それらの事項を記載した書類を作成し、これを2年間保存する義務があります。

ライターや出版業界の慣例として、口頭での契約が多く、契約書が交わされることはほとんどありません。契約自由の原則によりどのような契約の方法をとるかも自由であるため、口約束でも契約は成立します。しかし、これらの義務を怠った場合、親事業者には50万円以下の罰金が科せられます。

【2】支払遅延の禁止

親事業者には、物品などを受け取った日から起算して60日以内のできるだけ短い期間内に、代金の支払期日を定める義務があります。また、あらかじめ定められた支払期日までに支払わないことを禁止しています。

そして、期日までに支払わなかった場合は、下請事業者に対し、受領日から60日が経過した日から実際の支払日までの日数に応じて、「未払い額×年率14.6%」の遅延利息を支払う義務があります。

【3】受領拒否の禁止

下請事業者に責任がないにも関わらず、発注した物品などの受け取りを拒むことは禁止されています。実際に公正取引委員会から警告を受けた受領拒否の事例としては、以下が挙げられます。

  • 親事業者の取引先のキャンセル
  • 親会社とその取引先との仕様変更
  • 販売先の売れ行き不振

【4】代金の減額・返品の禁止

上記と同様に、下請事業者に非がないにも関わらず、あらかじめ定めていた下請代金を減額すること、受け取った物品などを返品することも禁止されています。受領拒否の場合もそうですが、下請事業が合意していたか否かに関わらず、親事業者の優位的地位の濫用行為と認められる場合は、下請事業者に法的な責任はないとみなされます。優位的地位の濫用行為については、以下の様な具体例が挙げられます。

  • 親事業者の都合により無理な納期を指定し、納期に間に合わなかったための受領拒否や減額
  • 発注書面の内容が明確でないにも関わらず、仕様が合わないという理由での受領拒否や返品

公正取引委員会による立入検査などによって【2】~【4】の違反が認められた場合は、速やかに必要な措置をとるよう勧告がなされます。

不利な立場に泣き寝入りしない交渉術

ここまで下請法のポイントを解説してきましたが、実際には、企業や業界の慣習などによって、法律はないがしろにされているのが現状です。フリーライターの側も、「二度と仕事をもらえなくなるかも…」という不安が頭をよぎれば、「法律違反ですよ」とはなかなか口にできません。とはいえ、仕方がないことだとあきらめてしまうのはとても悔しいことです。ライターとしての価値を正当に評価してもらうためにも、自己の主張を受け入れてもらえるような交渉のコツを知っておきましょう。

【1】相手の防御を弱めようと意識する

相手の防御を弱めるとは、言い換えれば「こちらの話に耳を傾ける気を起こさせる」ということです。最も簡単な方法は、相手の信頼を得ることであり、そのためには相手に対する理解を示す必要があります。

出版業界で言えば、原稿料の支払いは本が出版された後がほとんどです。何らかの理由で出版が延期されれば、納品から4、5ヶ月後の支払いになることはめずらしくなく、きちんと遅延利息が支払われることもまれです。もちろんこれは、法律に則って考えれば看過されて良いことではありません。
とはいえ、それが会社の慣例であり、決まりに従わなければ交渉相手が会社を辞めさせられるとしたら、生活がかかっているという意味で、相手と自分が抱える苦しみは同じです。

・正しさを主張しすぎない

正しいことは、相手にNOと言わせないための武器になります。しかしながら、正しさが真摯に受け止められるのは、相手に受け入れようという意思があってこそだと言えます。そうでなければ、相手はただ頑なになってしまうだけで、交渉はそこから一歩も先へは進みません。

交渉の目的は、相手を打ち負かすことではなく、どちらも満足がいく合意に達することです。まずは、相手の心情や立場に配慮し、なぜそうでなければならないのか、相手の要求を把握しましょう。そして、そこからお互いにとって最も良い道を探っていくようにしましょう。

・相手を尊重しない譲歩は逆効果

交渉の場では、相手に先回りをして譲歩を申し出る「先制譲歩」というテクニックを使うことがあります。それ自体は、何かをしてもらったらお返しをしなければならない気持ちになる「返報性」という心理学に則った、有効なテクニックです。
しかし、駆け引きにこだわりすぎて相手の意思を尊重する心がけがなければ、テクニックだと容易に見抜かれてしまいます。あくまでも信頼関係を築くための譲歩であることを忘れないようにしましょう。

【2】論理と心理が交渉の鍵

「相手の要求をすべて呑むしかない」という追い詰められた状況のときこそ、感情に流されず、論理的、合理的に話を進めることに徹しましょう。
フリーランスは、企業と比較すればどうしても弱い立場です。上から目線で押し付けるような言い方をされ、頭にくることもあるでしょう。しかし、人は優位な立場にいるときほど隙ができるものです。「いけ好かないヤツだ」という感情はひとまず置いておいて、問題解決の突破口がないかを冷静に判断しましょう。

・契約の際にはメモをとる

ライター業界では、契約書を書いてもらえない場合がほとんどです。そのため、口頭で契約をする際は、内容や条件をメモにとりましょう。後から問題が発生したときは、メモをもとに交渉を行うことで、感情的になりにくく、理屈の流れを追いながら論理的に話を進められます。

メモは相手にも見せながら交渉を行うと、さらに効果的です。もちろん契約書のように法的な意味は持ちませんが、牽制にはなりますし、少なくとも相手に聞く耳を持ってもらうことができます。

おわりに

最終的には裁判という法的手段に訴えることもできますが、経済的にも精神的にも大きな負担になります。交渉の段階でお互いが納得できる結果を導き出すことが、最良の選択だと言えるでしょう。もし、仕事をしていく上で悩みを抱えている人がいれば、「下請かけこみ寺」に相談してみてください。

中小企業庁 下請かけこみ寺

全国に設置されている、中小企業庁の無料相談窓口です。徹底した情報管理によって、情報提供者は発注者から特定されないよう保護されるため、安心です。具体的な違反事例が増えていくことで、今後の改善も期待されるでしょう。

参考文献
『下請け契約トラブル解決法』 東京弁護士会親和全期会著 自由国民社出版
『逆転の交渉術』 中込一洋著 幻冬舎出版

著者プロフィール:原田怜果
フリーライター

福岡県出身、佐賀県在住。一度は理化学系に進む決心をするも、紆余曲折を経てライター活動を開始。これまで、建築、美容、栄養関連など、幅広い分野の執筆を手掛ける。現在は中央大学通信教育課程で法律について学びながら執筆活動を続けており、法律関連の執筆を得意とする。

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