ユーザープロフィール

ゲストさん

開発指向からサービス指向へ

日本の高度成長を支えたのは、MADE IN JAPANに代表される高品質、低価格なモノ作りです。しかし台湾、中国、韓国と言った国々の生産レベルは年々向上しており、消費者にとっては既に十分なレベルに達しています。そのような中で注目しなければならないのはサービス指向という考え方です。今回はこのサービス指向について考えたいと思います。

開発指向とは

いわゆるモノ作りです。形から入る方法で、見た目や機能重視と言えます。この手法が優位なのは製造コストが大きい商品になります。自動車や家電といったリアルの世界で扱われる商品については手に持って触れるため扱いも多様性があり、触り心地や耐久年数なども比較対象になります。この形から入る考え方を指します。

サービス指向とは

モノが伴う場合であってもそれは一部であり、ソフトウェアやブランド、サポートなど全てを通してサービスとして提供する考え方です。モノはあくまでもサービスの一つの魅力であると考えることで、あくまでもユーザにとって良いサービスであり続けると言う考え方ができます。

インターネットでもモノ作り?

非常に残念であるのは、インターネットの世界においてもこのモノ作り信仰が蔓延していることです。例えば「多機能であるのは良いことだ」「公開した時が完成形」「機能が多ければ他のサービスから乗り換える」「優れた技術を用いる」といった類のものです。これらははっきり言って時代遅れです。しかし日本人の中にはモノ作りニッポンの考え方が染み付いており、なかなか脱せていないのが実情です。

リーダー不在

何らかのプロジェクトを進めるにあたって、リーダーの存在は絶対です。これはどの規模であっても同じです。が、日本では出る杭は打たれるという考え方があり、責任をもってメンバーを引っ張っていける勢いのあるリーダーは殆どいません。プロジェクトリーダーは総じて意見の調整役に回ってしまい、その結果として利害関係の落としどころを見つけるのに注力してしまいます。そのため大抵のプロジェクトはユーザニーズが感じられない、最大公約数的なものになってしまいます。

サービス指向を考える中にあってはリーダーの存在は必須です。リーダーがユーザを会話し、ニーズを組み上げ、その中から特にサービスをより良くするものを提供していきます。時にはユーザニーズとは異なる場合もあるかも知れませんが、それも含めて責任を負えるのがリーダーです。

機能は重要ではない

二割の機能がユーザニーズの八割を満たすと良く言われます。システムを組む際に仕様として挙がったものに大半は「一年に一回あるかどうか」「ある特定の顧客にだけ行う」といったイレギュラーになった経験はないでしょうか。サービス指向においては、サービスを気分よく使ってもらえることが最重要な課題になります。そのため余計な機能はユーザを混乱させる可能性があり、取り外すべきなのです。ユーザにとってよかれと思った行為が逆にユーザを苦しめたり、ストレスを与えている可能性を考えなければなりません。

同じ土俵で勝負しない

最近、iPhone/iPadライクなガジェットが多数登場しています。またAmazon EC2が登場して以来、クラウドホスティング的な代物が多数出ています。このように相手と同じ土俵で勝負すると、必ずユーザに比較されてしまいます。その時に差別化要因としてあげられるのは「機能」「ハードウェアスペック」となってしまいます。さらに常に「iPadとはここが」「iPadと比較して」といった単語が並ぶことになって、iPadの宣伝に使われてしまうのがオチです。実際、AmazonではEC2をそれほど宣伝していないのですが、他社が勝手にEC2との比較をしてくれるお陰でパブリッシングに貢献していると言われています。

またiPadについてはハードウェアでは勝負していません。iTunesやApp Store、デザインといったサービスで勝負をしています。その中にあって「電子書籍が10万冊」「CPU速度が」といったスペックで勝負しようとしてもユーザの心には決して刺さりません。

サービス指向に切り替わるタイミング

これは商品やインフラがコモディティ(大衆)化したタイミングによります。インターネットにおいても既にインフラは一般化しています。アーリーアダプターやギークが楽しんでいた時期はとうに過ぎ去り、一般ユーザが当たり前のようにインターネットを(もはや意識せず)使う時代になっています。それは携帯電話やテレビ、車についても同じです。こうしたデジタルな代物について言えば、F1世代(25〜35歳の女性)が使い始めたタイミングが最も指向を切り替えるタイミングと言えるかも知れません。既にインターネットもパソコン、携帯電話さらにスマートフォンもその時代に入ってきています。

デジタル時代の注意点

まず絶対的に重要なのは、模倣コストがとても低いという点です。かつ同じものを作る場合、二番手の方が試行錯誤がない分、有利になります。ハードウェアを伴うことで、この障壁を引き上げることはできますが、初期開発コストは大きくなってしまいます。

また製造コストも低い点にも注意が必要です。決められたスペースが存在しないため、ハードウェアのように決められた筐体のどこにボタンを配置するかといった試行錯誤が必須ではなくなります。その広範囲の空間が逆に想像を豊かにしすぎ、機能を詰め込みすぎる傾向があります。いかに制限された空間の中で絶妙なボタン配置を行うかを常に検討しなければなりません。

デジタル時代の利点

Webサイトの修正はとても容易です。サーバサイドのデータであれば後からメンテナンスするのも容易です。サービス指向においては、後からのバージョンアップや修正がとても簡単にできます。そのため、あまり長考しすぎて時期を逃したり、開発工数を増やすのは得策ではありません。二割の機能で八割のユーザニーズは満たせるということを念頭に置き、どの機能を必須としてどの機能を後回しにするかを検討する必要があります。 デジタルの世界では自分たちの表現したいものを従来に比べて圧倒的に低いコストで実現できるようになりました。iPhoneやAndroidのような筐体をベースにすることで、大抵の必要な機能をまかなえるようにすらなっています。そうしたサードパーティをうまく使うことで、より本質的なサービスにだけ注力できるようになります。

開発は継続ありき

従来のモノ作りではバージョンアップするという考えは希薄でした。そのため携帯電話も一度作られたものが完成形で、筐体ごと変更しなければバージョンアップできませんでした。サービス指向においては開発はリリース後も継続される前提で、完成形はありません。iPhoneにおいても最初は突然落ちたり、再起動を余儀なくされたりして他社は「格好いいけど完成度が低い」と評価しました。その評価を継続的な開発、バージョンアップによって克服したのは、まさにモノを作っている訳ではないという観点があるからこそではないでしょうか。

他社をうまく利用する

日本ではモノ作りにおいて自社主導で行ってきた経験があるためか、なぜか自社でどうにかしようという考えがあります。それが顕著なのが電子書籍マーケットです。どこもマーケットプレイスを作ることに躍起になっています。恐らくこのままでは全て共倒れするでしょうし、僅かながらも儲けるのはDNPや凸版印刷をはじめとするどのプロジェクトにも関わっている印刷会社だけです。ただし他社と組んだ場合は常に最大公約数なものが出てくるので、手詰まった感もあります。

サービス指向になるには

まず大事なのはコンセプトです。モノやシステムから入るのではなく、概論としてのコンセプトが大事です。モノやシステムありきでコンセプトを考えるために、一定の枠組みにとらわれてしまいます。そしてそのコンセプトを実現するための手段を考えます。もちろんコストや持っている技術によって選択肢は限られてしまうかも知れませんが、形から入るよりは健全ですし、俯瞰的に見ることで新しい可能性を得ることもできます。

もう一つ大事な要素は継続性です。リリースまでに全力を使い果たしてしまうようなやり方はサービスを作り上げる上で不向きです。リソースをサービス開始時点に集中させるのではなく、継続性を含めた上で分配しなければなりません。予算組を行う上で注意が必要です。

人員配置についても考える必要があります。人件費はサービスの運営コストの中でも大きな割合を占めることが多々あります。そのため人件費が重荷になってサービスをやめてしまったり、人を削減したり、別なプロジェクトで平行に作業させたりといった対応に迫られるようになります。初期状態からできるだけ少ない人員で開発、運営できる体制を整える必要があります。

まとめ

自分たちが提供しようとしているものが何であるか、それを考えるのがサービス指向です。また日本の消費者の観点からすれば、既に多数のハードウェアに囲まれた中で生活しており、これ以上モノは必要ないと感じています。その中で、対モノでマインドウェアを奪うというのは現実的ではなくなっています。ソフトウェア、ハードウェア、サポート、ノウハウ、ブランドなど全てを統合した上でのサービスと考えることで、ユーザに体感を提供できるのではないでしょうか。

PR_infeed

PR_Relative

オウンドメディア運営会社の皆様へ

s

ページトップ