新規事業のアイデアをすかさずクリップ! 三井不動産流 イノベーション創造術

新規事業のアイデアをすかさずクリップ! 三井不動産流 イノベーション創造術

新たなビジネスモデルの実現、新規事業の創出―。
ビジネスの世界では耳にしない日がないほどよく聞かれるこうした課題も、その実現のためには、自分の仕事を客観的に見直すための環境や外部からの刺激が欠かせません。とはいえ、巷であふれる様々なメソッドを試してみたり、コンサルタントの意見をとり入れてみたりしても、どれもピンとこないという人も多いはず。そんな悩みを抱える人が集まる場所として注目されているのが、2014年の春に三井不動産が新規事業創出を支援する取り組みとしてスタートした、イノベーションのためのコワーキングスペース「Clipニホンバシ」です。

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トイロハもイチオシのこの企画について、Clipニホンバシの設立当初から運営に携わり、現在も参加者の支援に奮闘する三井不動産 ベンチャー共創事業部の光村圭一郎氏にお話をうかがいました。
(トイロハ編集部)

「越後屋」に始まる三井グループのイノベーションのDNA 

昼夜を問わず、多くの人でにぎわう東京・日本橋。
この場所で様々な業種の企業に所属するビジネスマンを中心に、起業家やフリーランスで働くクリエイターなどに向けて開放されている「Clipニホンバシ」。まず光村氏は、三井不動産にとっても1つの新規事業だというClipニホンバシの立ち上げの経緯について、次のように話してくれました。

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「もともと三井グループの創業のルーツは、江戸時代にこの日本橋で創業された『三井越後屋呉服店』(越後屋)にあります。現金掛値なし、店前(たなさき)売りなど、当時としては斬新な商法にチャンレンジし、まさにこの時代を代表するベンチャー企業でした。ただ、この数十年について言えば、条件のいい場所に立派な建物を建てて高い家賃をもらうという、不動産業界の伝統的なビジネスモデルに固執していた面が否定できません。そこで、新規事業に取り組むベンチャー企業の支援を通じて、イノベーションのアイデアを発掘し、三井不動産が自らの組織を変革するための取り組みとして、2014年に『31VENTURES(サンイチベンチャーズ)』がスタートしました。Clipニホンバシもこの中から生まれた1つのチャレンジです」

すでに31 VENTURESでは、千葉県柏市で開発を進めている複合施設「ゲートスクエア」(所在:千葉県柏市)において、新たな産業を生み出すためのイノベーション拠点「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」などの支援プロジェクトを進めていますが、31 VENTURESの枠組みの中でも、Clipニホンバシは企業の中で新規事業創出のミッションを抱える担当者の支援、人と人とのネットワークを通じたコラボレーションの実現にウェイトを置いています。

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「コワーキングというと、フリーランスのクリエイターや起業家など、特定のオフィスを持たない人たちの共有スペースというイメージが強いかもしれませんが、Clipニホンバシの利用者の約半数は新規事業の育成というミッションを持つ企業の社員です。企業の中には、すでに新規事業を生み出すための具体的な行動を起こしている人、課題意識はあってもその方法を模索している人、あるいは、まだ気付きの段階にも至っていない人など、様々な意識レベルの人がいます。Clipニホンバシは、新たなアイデアやビジネスを生み出すための環境づくりをコンセプトに、幅広い業種から参加してもらう皆さんのネットワークを中長期的に支援していく、いわば“イノベーションラボ”です」(光村氏)

初対面からコラボが生まれる実践的なプログラム

企業を取り巻くビジネス環境は、この数年で大きく変化しています。業務環境の面では、モバイルデバイスを使って社外で仕事をするのが当たり前になり、これまでのような物理的な制約はなくなっています。また、新規事業の創出においても、業界の垣根を越えた異業種間の協業も珍しくありません。Clipニホンバシは、参加者の皆さんが共有できる1つの場所を使って様々なイベントを開催し、新規事業の創造に必要なナレッジやアイデアの発想方法を身に付けてもらうことで、起業家、フリーランス、企業の新規事業担当者間の質の高いコラボレーションを生み出し、イノベーションに対して能動的なアクションを起こしていくことを目指しています。

「日本人はシャイですし、初対面の人間同士がいきなり顔を合わせてアイデアを共有するのは、ハードルが高いことも事実です。ですから、モバイルワークに最適な場所さえ提供すれば何かが生まれるだろうという受け身のスタンスではなく、ソフトウェアの力、つまりイベントやセミナーを通じて参加者の皆さんがお互いを理解するためのきっかけづくりには、当初から力を入れています。そこでは当然、私たち運営側も積極的にコミットして、起業の基本原理であるPDCAをスピーディに回転させながら、参加者の皆さんと成果を共有しています」

代表的なイベントとして挙げられるのが、水曜日の夜に定期的に開催されている「チラミセnight」。これは、起業家やクリエイター、NPO法人の代表など、ジャンルを問わず様々な業界でユニークな活躍をしているゲストが登壇し、それぞれのアイデアやビジョンをプレゼンするイベントです。大きなビジネスに発展する可能性を秘めた新鮮な“アイデアの種”を発見できる場として、多くの参加者が集っています。また、「スカウト交流会」も人気企画の1つです。これは参加者自身の企画、アイデアに第三者を巻き込み、ビジネスとして発展させていくプロセスを実践できるプログラムです。この場を通じて、会社員の立場ではなかなか体験できない“他人をスカウトする力”を養うこともできます。

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こうしたプログラムの中で実際に生まれたアイデアに対して、運営スタッフが進捗を見守りながら細やかなサポートをしていくところも、Clipニホンバシならではだと言えます。他人との接点を持てる仕組みをつくり、さらに生まれたアイデアをひらめきのまま終わらせるのではなく、その後もフォローしていくことでイノベーションにつなげていく。その中では、企画の相談に行って叱られることもあるようですが、光村氏いわく、それも新規事業を創出する上で避けて通れない「熱気」だといいます。複数のプライベートコンサルと話し合いながら、いろいろな角度でアイデアを検証していくことで、さらに磨きがかかるということです。

起業家×企業の化学反応から生まれるイノベーション

多彩なプログラムを通じて、会社という枠を超えたビジネスチャンスを生み出すClipニホンバシ。参加者のモチベーションも高く、実際に異業種間のコラボレーションを通じて、これまでにない新規事業が生まれています。最近の例では、タクシー業界最大手の日本交通と、ベンチャー企業の支援を手がけるトーマツ ベンチャーサポートがタッグを組んだベンチャー支援策「ハイヤーピッチ」があります。これは、自らのアイデアをビジネスにしたい起業家と大手企業の役員がハイヤーに同乗し、直接プレゼンする場を設けるというユニークな取り組みですが、全く業種が異なるこの2社が出会うきっかけとなったのが、各企業で新規事業を実践しているイントレプレナー(社内起業家)が登壇し、ビジネスパートナーを見つけることを目的としたプロジェクト「イントレnight」だったといいます。

「この日の登壇者だったトーマツさんの新規事業担当者は、大企業の意思決定権者とスタートアップが出会う仕組みをどうつくるか模索中でした。一方の日本交通さんは、ハイヤー・タクシー業に新しい付加価値を見いだすという課題を持っていました。そこから、ハイヤーという空間を使って起業家が役員にプレゼンする場を設けようというアイデアが生まれたのです」(光村氏)

新しい未来をつくるビジネスの発信

2014年の春にスタートしたClipニホンバシ。実は、この取り組み自体も運営母体である三井不動産の社内ベンチャーによって生まれた新しい試みです。ここ数年、組織の枠を超えて新しい価値を創造する「オープンイノベーション」という考え方が広まりつつありますが、不動産業界に限らず、単独の企業が手がける新規事業の可能性にはどうしても限界があります。そこで、単に快適なオフィス空間を提供するだけでなく、“働くということ”全体の仕組みを提供できるディベロッパーになることを目指して、社内のビジネスコンペに出されたアイデアがClipニホンバシの原形でした。

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「社内のビジネスコンペにClipニホンバシの原形となる案を出したとき、偶然にもそれぞれ別の部署の3人が同じようなアイデアを出していたんです。コンセプトに多少の違いはあったにせよ、今まで出会うことがなかった人材や技術、モノと交わるという芯の部分は共通していました。ならば4人の案をコラボして、1つの事業をスタートさせようという流れになり、試行錯誤の結果、今の形が実現しました。スタートして約2年。Clipニホンバシは、もちろん私たちためだけの場所ではなくて、参加している企業の皆さん、クリエイターの皆さんのほかにも、多くの方にこの場所を使っていただいて、どんどん新しいビジネスを伸ばしていければいいなと思っています」

スタートして約2年。Clipニホンバシは、もちろん私たちためだけの場所ではなくて、参加している企業の皆様、クリエイターの方々のほかにも、多くの方にこの場所を使っていただいて、どんどん新しいビジネスを伸ばしていければいいなと思っています」(光村氏)

たとえ小さなアイデアでも、会社という枠を一歩飛び出することで、やがては未来を変える大きなイノベーションにつながる可能性を秘めていることを、まさにClipニホンバシが体現しようとしています。これまで日本にはなかったこうした土壌の中で、新しい可能性の芽を育ててみてはいかがでしょうか。トイロハでは、今後もClipニホンバシをウォッチしながら、読者の皆さんに最新情報お伝えしていきたいと思います。

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