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利用者の自主性を尊重するコワーキングスペース「gain-Y(ガイニー)」(高松)

利用者の自主性を尊重するコワーキングスペース「gain-Y(ガイニー)」(高松)

コワーキングツアー・リポートVol.8

各地のコワーキングスペースを巡り、日本のコワーキングの「今」を体感するコワーキングツアー。そこで見聞したコワーキングのあれやこれやを切り取ってご紹介するコラム、その8回目は、香川高松の「gain-Y(ガイニー)」さんにおじゃまし、運営者である風呂めぐみさんにお話を伺いました。
(※取材 2016年4月23日)

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gain-Y(ガイニー)
〒760-0062 香川県 高松市塩上町三丁目16番9号 2F

ジャンヌ・ダルクになりたかった

「ガイニー」がオープンしたのは、2012年10月。高松に最初にできたコワーキングスペースだ。ちなみに「ガイニー」とは、さぬき弁で「ものすごい」を意味する「がいに」と、英語の「gain(ゲイン)」をかけていて、末尾のYにはたくさんの人々とワイワイするという想いが込められている。

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オープン当時は新聞やTVなどで結構な頻度で紹介されたものの、地方都市におけるコワーキングがまだそう認識されていない時期だったせいだろう、なかなか利用者はやって来なかった。が、そのうち、タブロイド誌の記事や、人のクチコミがきっかけで徐々に利用者が現れる。

運営者が女性だから、自然と女性が多く集まるのかと思ったら、意外にもその比率は男女半々だそうだ。風呂さんとしては、女性ばかりである種サロン的な場所になるよりも、あくまで仕事メインで男性に混じってバリバリ仕事をする環境というイメージがあったらしいので、そういう意味では理想的な比率かもしれない。

しかし、当初イメージしたものと違っていたのは、実はご自分の立場だった。

私は、ジャンヌ・ダルクになりたかったんです。高松にもっと起業人を増やそう、それには自分が中心になって引っ張っていこう、先頭切って行こうというイメージの。でも今はそれより、サポートに回るほうが多いです。ちょっと距離を置いて、少し離れてほんわか〜と見守るという感じになってきました。(笑)地方だとそのほうがうまくいく気がします。たぶん都会でしたら、わーっと旗振って、こっちだよ〜という感じだと思うんですけれど。

「ジャンヌ・ダルクどころか、学生を見守る寮の食堂のおばさんですよ」と笑いながら風呂さんは言うが(失礼)、こうした運営者の想いと現実のズレはやってみてはじめて判ることであり、実は都会か地方かは関係ないかもしれない。

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放っておかれる方がいいみたい

コワーキングスペースの主宰運営者には、さまざまな課題がある。コワーキング(という概念)をベースとした自分と利用者との距離感(あるいは関係性)も、そのひとつだ。というか、コミュニティを核とするスペースであるならば最大の課題だろう。

コワーキングスペースの中には、主宰運営者のキャラクターを色濃く反映するスペースが確かにある。かく言うぼくもたぶんそのひとりに数えられているのだろうが、コワーキングスペースを単なる「場所」として提供するのではなく、ともに利用して仲間を作り互いに助け合う「コミュニティ」として運営するという意識の高い人ほど、その傾向が強いのではないか。

しかし、コワーキングスペースが、元来、多様性を受け入れる環境であるかぎり、さまざまな価値観を持つさまざまな属性の人が出入りするのは必然だ。そのために、ともに相容れられない思考や行動があって遂には交じり合わないままになるケースも、時としてないわけではない。そして、そこがジレンマでもある。

「私の場じゃない」という感覚でしょうか。そういう割り切りができたのはオープンしてから1年半か2年ぐらい経ってからです。それまでは、なんでも自分でコントロールしないと気がすまないっていう感じだったんですけど。

ぼくにも同じ経験がある。開業当初、コワーキングが日本中に広がればいいなという気負いもあって、アメリカのそれをお手本にいろんな型にはめようとしていた時期があるが、よくよく考えたら世間に全くコワーキングの予備知識のない状況で、誰が来てどんなコミュニケーションをするのかコントロールできるはずもなく、また、する意味もなく、来る人の自主性と自由に任せるのが自然だと気づいてやめた。

それ以来、誰でも使える仕事寄りの公民館というイメージで運営している。使いたい人がみんなで共用するコモンズだ。

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面白い事例を風呂さんは挙げてくれた。

サブカルチャーの漫画の会というイベントがあったんです。正直、そんなのに、いったい誰が来るの?と思ってたら、めちゃくちゃ来たんですよ。ああなるほど、主宰の人が自由にやれるような感じにした方がいいな、と。自分が集客したお客さんに自分のコンテンツを提供する。そこに私はいないほうがいいんです。映画の会もそうですよ、メンバーさんが勝手にやっています。私とメンバーさんとの信頼関係ができてるので私的にはそれでイイと思っています。

映画の会は、そもそも超短焦点のポータブル・プロジェクターを入手したメンバーの「使ってみたいんだけど」という一言で始まった。毎回、参加者がみんなで次に観る映画を選んで自主的に開催している。お片づけ教室もそうで、「自分たちがやりたいものをやったらエエやん」というのが、風呂さんのスタンスだ。

自分の考えだけで動いてはいけないということを勉強しましたね。思い知ったというか。ある程度年齢を重ねると、自分の頭の中のフレームワークだけで考えがちじゃないですか。でも、「ホントかな?」と思うことでも経験してみたら、ちょっと違うものが見えて来ます。

そして、「むしろ、放っておかれる方がいいみたい」と言う風呂さんの言葉にはハッとさせられるものがある。敢えてスペース側がいちからお膳立てせずに、利用者の自由な発想と活動をそっとサポートすることのほうが、コワーキングが果たすべき本来の役割なのではないか。

ただそのことに気づくのには、1〜2年の運営体験が必要かもしれない。あれこれ手をつくして試して来た挙句に、フッと力の抜きどころが判ってくる。

コワーキングの本質はコミュニティにあると言われる。ぼくもよくそう言う。しかし、そのコミュニティとは、必ずしもスペース側が用意したものだけを指すのでは、実はない。

もちろん、最初はスペースのコミュニティに参加するところから始まる。しかし、その後はむしろ、利用者がそのスペースのコミュニティから派生させて自分自身のコミュニティを構築し、維持するためにコワーキングを使うようになるほうが自然だ。

自分のプラットフォームとしてコワーキングをうまく使っている人は、自立している人ですよね。言い換えると、余裕のある人たちなんです。余裕があってアクセスしたい時にだけ来る、という感じでしょうか。逆に、興味がないことには一切参加しませんし。

そしてまた、コミュニティとは生き物であって箱ではない。だから、日々変容する。そこに集う顔ぶれによって毎日違う空気が充満し違う時間が流れる。「放っておかれる方がいいみたい」という風呂さんの一言は、我々、とりわけスペース運営者にそのことを思い出させる。

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外に向けてと内側でやりたいこと

さて、風呂さんが今後やっていきたいことはふたつある。そのひとつは、「ガイニー」で仕事する技能者の集団を外に向かってアピールすることだ。

いろんな能力を持ってる人がいるけれど、みんな個人プレイヤーなんですよ。そういう人たちを繋げれば、こんなことができますと、きちんと外に向かって認知させていきたいんです。つまり、協業ですね。そうして、「ガイニーに頼んだら、面白いものができるんじゃないか」と思われるような集団にしたい。

それは、ことウェブに限らない。実のところ「ガイニー」には、アプリ開発やウェブ制作以外に、ハンドメイド作家、コーチング、DTP、片付けコンサルタント、ファイナンシャルプランナー、ビデオ制作、モデル、等々、実に多彩な人材がいる。そうしたタレントをうまく活用したいというわけだ。これは、前回ダイヤモンドクロスでも同じ取り組みについて聞いたところ。

それが、外向けだとすると、もうひとつは内側でのことだ。

それぞれが自分のコミュニティの場としてここを使ってるんですけれど、私としてはクロスさせたいと思ってて。交われる仕組みを作りたいんですよね。読書会の人たちとお片付けの会をやってる人を組み合わせてみるとか。日頃の興味の対象は違うけれども、くっつけたら面白いことが起こるんじゃないかと。で、各自がビジネスをする上で悩んでることを、お互いに訊く会みたいなのが必要かなと考えています。

異業種の起業仲間を持つというコンセプトは、前々回マツヤマンスペースとも相通じるものがある。このふたつは、これからのコワーキングスペースの共通の課題だろう。

「まあでも、あまり堅苦しくやると集まらないので、おでんの会にしてワイワイ語り合うようにしようかなと思っています」。それはいい。ビジネスは楽しくやるものだし、そのためにも、コワーキングはあるのだから。

(取材・テキスト / 伊藤富雄)

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gain-Y(ガイニー)

〒760-0062 香川県 高松市塩上町三丁目16番9号 2F

・月額メンバー
 A:10時〜17時 初期費用¥3.240 ¥7.560/月
 B:土日祝のみ 初期費用¥5.400 ¥5.940/月

・ドロップイン
   2時間まで¥540 一日¥1,080

※その他、イベント利用についても豊富なメニューがあります。

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