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16万人都市で地方創生のモデル化を目指すコワーキング「HanaLab.Coworking」(長野県上田市)

16万人都市で地方創生のモデル化を目指すコワーキング「HanaLab.Coworking」(長野県上田市)

各地のコワーキングスペースを巡り、日本のコワーキングの「今」を体感するコワーキングツアー。そこで見聞したコワーキングのあれやこれやを切り取ってご紹介するコラム、その24回目は、長野県上田市の「HanaLab.(ハナラボ)CAMP」さんにおじゃまし、運営者である一般社団法人ループサンパチ代表理事の井上拓磨さんと柚木 真さんにお話を伺いました。
(取材・テキスト / 伊藤富雄 取材日:2016年8月19日)

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HanaLab.TOKIDA
〒386-0018 長野県上田市常田2-27-17 FUJIMOTO2F
TEL. 0268-71-7322

HanaLab.UNNO
〒386-0012 長野県上田市中央2-10-15 千曲錦ビル
TEL. 0268-71-7322

HanaLab.CAMP
〒386-0033 長野県上田市御所583
TEL. 0268-71-7322

それは「TOKIDA」から始まった

「HanaLab.(ハナラボ)」(以下、ハナラボ)は、上田市内に目的別に運営している3ヶ所のコワーキングの総称だ。今回は、そのひとつである「HanaLab.CAMP」(以下、「CAMP」)におじゃまするつもりだったのだが、井上さんのご厚意で他の2つ、「HanaLab.TOKIDA」(以下、「TOKIDA」)と「HanaLab.UNNO」(以下、「UNNO」)にもご案内いただいた。

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ハナラボの歴史は2012年2月に長野県で最初にオープンした「TOKIDA」から始まるが、その前年2011年の6月から準備が始まっていた。実はちょうどその年の12月に、日本で最初のコワーキングのイベント、「コワーキング・フォーラム関西2011」をぼくらは神戸で開催したのだが、すでにスペース開設の秒読みに入っていた井上さんもはるばる長野から参加くださった。そのときの様子を興奮気味に書いた当時のブログはこちら。それ以来の、実に久しぶりの再会だ。

さて、井上さんは信州大学を卒業後、就職し、東京や福岡で仕事をしていたのだが、2008年頃、同社を退社して奥さんの出身地である上田へ帰ってきた際に、フリーランサーとしてモバイルコンテンツの企画・制作に携わるようになった。

そんなある日、iPhoneショック(iOSがフラッシュをサポートしないことを決定した)が起こる。それを機になにか新しいことを始めようかと考えたものの、地域にいろいろ話せる仲間がいないと何をやるにしても遅いし、やりにくいと感じた。

クライアントは東京とか名古屋ばっかりだから、全然上田に知り合いがいませんでした。飲み屋の雑談とかでいろいろなきっかけが生まれるというのは実感してたので、仕事という意味合いのネットワークを作りたいなと考えはじめたんです。 それでシェアオフィスとかを調べてたらコワーキングというのを知って、これは面白いかもと思ったのが最初ですね。で、東京のいくつかのコワーキングを見に行きました。

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最初にオープンした「TOKIDA」では、しかし、利用者がほとんどいなかった。そこで井上さんが取った作戦が、その後のハナラボの活動の布石となっていく。

上田市は人口16万人ぐらいの規模なんですけど、フリーランスがいないな、と。これって、地方でコワーキングを作ると必ずぶち当たる壁ですよね。 いないなら作るしかないなと思って、そこから創業支援的なことを始めたんです。支援というより、いろんな団体にスタッフとして入り込んで自ら起ち上げていく、というようなことを繰り返していました。主にNPO関係ですね。

もともと、創業支援の経験などまるでなかったというから、まずそのことに驚く。そうせざるを得ない、やらなければ誰も来ない、という切迫感がそうさせたのだろう。仕事をするためのネットワークが、閉塞しがちな地方を変えていくという気づき、そしてそれがないなら自分たちで作ってしまおうという気概は、ぜひ見習いたいところだ。

いくつもの法人の起ち上げに関わり、それぞれで多くのタスクをこなしていく。この頃は本当に大変だったらしいが、今や「TOKIDA」はフリーランサーや学生のみならず、地元企業の経営者、ベンチャー企業の創業者、NPO、さらには移住してきた会社員など、実にさまざまな働き手の拠点として機能している。

ちなみに、昨年までは、上田出身で県外に進学していった学生を夏休みの間や、休学している3ヶ月から6ヶ月の間、地元の企業に入れることで、起業マインドを高めていくインターン事業も行っていたというから、パイを増やすためのその周到な企画力には感心する。

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女性の能力を無駄遣いしない社会の実現

そしてまた、地域課題の解決のひとつが働く女性の育成であり、そのために2015年の4月に開設したのが「UNNO」だ。

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「TOKIDA」をやっていく中で、どう上田の人材のインフラになるか、みたいなところを目指すようになってきて。というのも、上田が成り立たないとぼくらも成り立たないので。そうすると、どんどん根っこの部分を解決せざるを得なくなっていったんです。

いま、ハナラボとしては産業振興が目的なんですけど、ひとつは雇用の確保で、地域の雇用力をどう上げていくのか、です。創業はひとつの大きなファクターではありますが、製造業など基盤産業も頑張ってもらわないといけませんよね。創業だけで地域の全部の雇用力を賄えるかというと、そこはなかなか難しいので。なので、ハナラボでは製造業とコラボした新規プロジェクトとか新規事業のお手伝いとかをしてたりします。

もう一方で働き手の確保が課題です。これから人が減っていく中で、起業していった人たちが規模を拡大していくときに働き手がいないだろうと。そこで、優秀な働き手を確保しようということで子育て中の女性を、今地域が一番活かしきれていない人材として、その社会復帰のところを支援しようとしています。

「UNNO」では、「優秀な働き手として育ってもらう」ことをテーマとしており、将来、雇用したいという企業に労働力として輩出することを目的として、実際に協力企業から仕事を受託し、グループを組んでOJTで訓練している。

女性は就職して働くという現実的な選択をする人が母数としては多いので、そういうお母さんたちを対象にしています。その背景には、保育園に子供を通わすためにレジ打ちのアルバイトしているうちに、いつしか正社員の道が閉ざされてしまうという現実があります。

ぼくらはいかに正社員として戻していくのかというところに主眼を置いているんです。 ぼくらはコワーキングが主業なのでコワーキングを成り立たせるためにはいろんなことを解決しなきゃならないんですけど、そのひとつがそれですね。

なるほど、着眼点がまるで違う。女性の人材開発を進めて、以ってローカル企業の労働力を再生するという発想は、意外とコワーキングの目的としては意識されていないのではないか。少なくともぼくは考えていなかった。

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こうなってくると、コワーキングという概念が無限の広がりを持つようになってくるが、そもそもコワーキングは地域に根ざすコミュニティであるので、そこに暮らす人たちの生活を豊かにするプログラムなら何を動かしてもいい。

「UNNO」には、託児所やキッチンなども整備されていて、子育てと仕事を両立させ、社会の一員たりたいと考える若い母親を支える環境を提供している。そこでは、アンケート集計やデータ入力などの作業から、ウェブデザインやチラシの制作、あるいは母親向けの記事や企業の求人記事などのライティング業務など、さまざまな仕事をチームに分かれてこなしている。

最初はテストケースでうちに入居している企業から仕事はもらってたんですが、いまは東京の企業からとか、地元の製造業の方からとかいただくこともあります。まあ、ぼくらが営業してるって感じですね。ぼくらみたいに人口16万人ぐらいの都市で、さらに地域課題に目が向いてるところだとどうしてもそうなります。

大都市のモデルってどっちかというとバッと集めて、バッと対象者だけ選別して、そこでなにかやるとして十分パイが保つんですけど、ぼくらはそうはいきませんよね。

例えば、創業のセミナーやっても参加者は10人とか、それが30人来ればスゴイねみたいな、人口比率的に言うとそうなっちゃうので、そうなると大都市のモデルってなかなか効かなくて、やっぱりトータル的に街をどう考えていくのかってことをやらざるを得ない、みたいなところがぼくらの中にはあります。

昨今、コワーキングやシェアオフィスの入居者でチームを組んでビジネスを興すというのはよく聞くが、これはそれとは少々違うところに力点を置いている。こういうスキームでコワーキングが地元の企業との連携の機会を持つのは、双方にとって確かに有効だろう。なお、ここで井上さんが言う「モデル」については、後半、また出て来る。

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中間支援組織としてのコワーキング

さて、3つ目に開設された「CAMP」では、「新しいコトが始まるネットワーク・モデル」を実現すべく、県の内外の人材が相互に支援できるコミュニティを創出することをテーマに、スタートアップはもちろんのこと、県外のベンチャー企業の誘致にも余念がない。

聞けば、「CAMP」の構想は「UNNO」の前にあったらしい。「TOKIDA」が手狭になってきたのと、ここを使っていたテナントが退出するので使わないかと声をかけてくれたのがきっかけだ。「駅から遠いとか、そういうことはあんまり考えないで、じゃあって感じで」スタートさせたそうだが、元は北欧家具のショールームとして利用されていて、その面積なんと350坪ある。(地方で200坪を超えると坪単価はかなり安くなる、とはいえ)

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ここには、カフェも併設されていて、ゆっくりコーヒーでも呑みに立ち寄れる空気が漂っていて、ランチメニューも大変美味しい。おまけに、シャワーやランドリー、さらには仮眠室まであるので、ちょっとした合宿にもお誂え向きだ。

「TOKIDA」と「CAMP」は非常に機能が似ていて、実はそうはっきりとは区別はしていないんですよね。強いて言えば、「TOKIDA」は昔からの会員さん、「CAMP」は新しい会員さんが使っているという感じですけど。

「TOKIDA」は、フリーランスになりたての方とかなんですけど、「CAMP」はどっちかというと、もうフリーランスの軌道に乗ってきた人がひとりやふたりでやってるとか、いわば小規模オフィスの集合体みたいな感じなので、どっちかって言うとシェアオフィス型に近いかもしれませんね。ま、まだこれから起ち上げていくっていう感じですけど。

「CAMP」にはその言葉の通りシェアオフィスも併設されていて24時間利用できる。ちなみに、「UNNO」の2階にもシェアオフィスがある。(ただし、ドロップインはない)

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こうした3つのコワーキングがそれぞれに特性を持ち、それぞれの利用者の目的に合った環境を提供しているが、それを統括する井上さんの才覚と実行力にはいささか畏れ入る。

いまは、従業員もいるし、まあ、いろいろ、ほら、あるじゃないですか(笑)。やっぱり、求められるものも大きくなってくるし。他の事も考えなければいけないし。ただ、地域のことを考えると、やっぱりやらざるを得ないというところがあって…。上田の街がなくなっちゃうんじゃないかと思ってるので、ぼくは。

つまり、危機感がそうさせる。それはどこの地方でも共通の概念だ。小倉の「秘密基地」でも「このままだと街がなくなる」という話を聞いたし、彼らも北九州市と連携して街の再生のためのさまざまなプロジェクトを動かしている。

「秘密基地」さんもそうかもしれないですけど、ぼくらって中間支援の立ち位置なんですよ。要するに、我々がなにかの主業をもっているわけではなくて、支援対象者がいて、それをどう地域のプレイヤーたちとつなげていくのかみたいなことですよね。

で、どのテーマをピックアップしてプロジェクトをどう動かすのか、というのがぼくらの仕事なわけです。今は、それこそ行政もそうだし、大学もそうだし、企業もそうだし、金融もそうだし、そういうところとは壁がなく突破して行き来できるようになっていて、それがぼくらの強みでもあるのかな、と思います。

そうか、中間支援組織としてのコワーキングという捉え方は判りやすい。

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「ハナラボ」の強みのひとつ、地元企業とのつながりも着実に実を結びつつある。オーディオ・メーカーの新製品開発に関しては会員であるプロダクトデザイナーやマーケッターが参加して、トータルなビジネスモデル構築プロジェクトが動いている。また、地元の伝統工芸である「上田紬」を素材に新しい生地と商品の開発を行っているが、ワークショップに参加したことがきっかけで会社が設立され、他社とのコラボも進んでいる。

そうした地元企業以外にも、農業系コンサルタントや、設計士、コーチング、あるいはEコマース系の他、自然エネルギー系のNPO法人も利用していたり、面白いところでは、医師のアルバイト斡旋業者や、「TOKIDA」のオープンスペースでキーボードを叩いて作曲しているクラシックの音楽家、という人たちがそれぞれの「ハナラボ」を拠点として活動している。
そこで働く柚木さんは、「ハナラボ」で創業支援に関われる毎日を楽しんでいると言う。

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彼は東京出身で信州大学を卒業し、その後また東京へ帰って大企業に就職した。だが、自分のやりたいこととは違うと感じ、また長野に戻ってきた。一時、他のコワーキングスペースで運営に携わっていたが、今年の4月に「ハナラボ」にジョインしたという経歴だ。

ぼくの場合、最初は人脈作りのためにコワーキングに来たんですけど、やりはじめてみるとコワーキングそのものが面白いということに気づいて。特に「ハナラボ」はメインがコワーキングで、その仕組みの中でいろんなコトを動かしていますよね。そこが楽しいです。コワーキングというエンジンを回すのが楽しい。ここで一生続けられる仕事を見つけられる気がしています。

なんとも心強い相棒だが、それも「ハナラボ」の地域課題を解決するというミッションに意義を感じているからなのは間違いない。

その「ハナラボ」のこのところの悩みは、あまりに忙しいために、満足にイベントを打てていないことだと、井上さんは言う。過去には、フリーランスが学びそうな技術系のセミナーや、ビジネスモデルを考えるようなイベントなど、数多くのイベントを開催してきた。中でもユニークなのは、有名人を呼んでの講演会だ。最近の例では、7月に池上彰さんと津田大介さんを「UNNO」に招いて、「女性の活躍」をテーマに対談イベント行った。

参加してためになるものと、「ハナラボ」のブランド価値を高めるものは、やらなきゃいけないな、と思っています。 で、今考えてるのは、これから育っていく人が「武器を身につける」ために学ぶべきことを、映像コンテンツにして、年間通じていつでも学習できるというものなんですけどね。

ただ、そのセミナーは単純に体系的なカリキュラムを編成することでは、どうやらないようだ。

上田でセミナーをたくさんやってきて思ったのは、セミナーって、基本的に人脈広げたいとかスキルを学びたいだけではないじゃないですか。だから、上田の人も同じ内容なのにわざわざ東京行って聞いたりするわけですよね。そこをどうブレイク・スルーするかというところは、ちょっと仕組みを入れなきゃいけないかなと考えてます。

それを井上さんは「部活みたいな…」と言ってから、少し考え込んだ。映像コンテンツを起点に、ビジネスを起こす人たちが、まるで「部活動」のようにスパークを起こしながら互いに切磋琢磨していく、それを「ハナラボ」がコンテンツでさらにサポートしていく、そういう仕組みを思い描いているようだ。松山や広島、郡山などで行っている「起業カフェ」系のプログラムと似ているが、コンテンツを用意するというところがユニークだ。

「ただ、その設計が億劫で…」と笑うが、たしかにこれは骨の折れる仕事だ。だが、早晩動き出す気配は十分にある。

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課題を根本から解決するための政策提言

もう少し、行政との連携について訊いてみたい。

行政に対しては、もう政策を作れるレベルまで来ているかなと思います。補助金制度とかは作れるんです。

例えば、「おためしナガノ」っていう最長6ヶ月間、長野に住んでもらって仕事してもらおうというプロジェクトがありますけど、あれも一昨年ぼくが県に提案した政策です。

移住者にはやっぱり現玉支給した方がいいと。住まいとコワーキング利用料とを補助する仕組みを作ったらいいんじゃないかと。まずはお試しで来るっていう、長野に来やすい状況を作ってくれって、ずっとお願いをしてたんですよ。

また驚いた。「おためしナガノ」はここ最近話題の移住促進プログラムとして、主に首都圏でIT系のワーカーの関心を呼んでおり、それもあって地方行政の関係者には注目されている。

地方行政はどこも移住に熱心だが、焦るあまりか「いきなり」感が否めない。ただ、手頃な家を用意するとか何ヶ月分家賃補助があるとかではなく、ぼくはそこに、働く環境をどう設えるか、働く仲間とどうつなげるのか、そしてどうやって仕事をゲットするのか、その手立てを用意していなければ、そう簡単に人は動かないと考えている。

長野県はそれを、「おためしナガノ」の6ヶ月間で体験できるよう参加者にオファーしている。制度として実によく設計されていて、事実、このプログラムに参加した方々の中から、実際に長野に移住する人たちが多数いるそうだ。ちなみに、昨年、上田市には4組が来てそのうち3組が残ったそうだから、打率は高いと言っていい。

蛇足だが、シェアオフィスについては創業10年未満の企業に対して一年間家賃の半額補助制度があるが、これも井上さんの提言からはじまって一年以上かけて整備された制度だそうだ。

だが、そうした行政との良好な関係も一朝一夕で築けたわけでは、もちろんない。

長野県にこんなにコワーキングスペースが多い理由のひとつとしては、ぼくらが一番最初に行政と連携して作ってる、ということがあげられます。たぶん、日本中のコワーキングの中でも、これだけ最初から行政にガッツリ入りながら、一緒にやり取りしていって作ってるコワーキングスペースって本当に稀だと思うんですよ。

最初のときに、上田市、長野県、商工会議所と、あと民間会社何社かとNPOで、グループ作ってやってたんです。上田市とか長野県は、変なやつが変なこと始めたみたいな感じだったんですけど(笑)、いろいろ頑張ってそれなりに少しずつ実績も積まれていく中で信頼関係ができていったんです。

実は最初の「TOKIDA」は、計画しはじめた2011年の9月ごろに補助金の申請をして、その翌年2月にオープンしている。行政との関係を地道に作り上げていったのは、それからだ。いまでは、地方創生の政策策定委員にも井上さんは名を連ねている。そこまで、行政にコミットしているコワーキング運営者はそう多くない。

でも、まあ、コワーキングを主業にしていないと絶対にできないと思いますよ、基本的には。自分たちの主業が他のなにかだったら、絶対できないと思います。 ぼくらにとっては、地域課題を解決することこそがハナラボが生き残る道なので、そこに全力投球したから、これだけ関係性ができていったというだけで。

政策提言も、「そこをやらないと根本的なところは変えられないので」、だからするのだ、と井上さんは言う。

「ハナラボ」のそういう志向性が強かったおかげで、行政にもコワーキングに対する理解が比較的あった。取材時現在で長野県内には16ヶ所ものコワーキングスペースがあっていささか驚いたが、こんなにコワーキングが多いのも、コワーキングを開業する際に補助金が使えるから、という事情があるかららしい。この制度はぜひ、他の地方行政も整備していただきたい。そこから生まれるものがローカル経済に貢献する可能性は大きい。

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横に展開できる地方創生モデルを上田で作る

これからやりたいことについて尋ねたら、地方都市を冷静に見つめて今後の方向性を探っていることがよく判る回答だったので、少々長いが以下に記す。

上田は16万人の都市なんですけれど、どちらかというと人が分散傾向にあって緩やかに減少していってるんです。かと言って、すごい田舎でもない。つまり、すごい人口規模が中途半端な街なんです。

地方創生というテーマではいわゆる限界集落に近い、「10人ぐらい移住したらスゴイ変わったぜ」みたいな街が注目浴びてたりするんですけど、ぼくらみたいな16万人ぐらいの街にとっての「これだ」というモデルが、いま、ないと思うんですよね。

大都市ってのは人がたくさんいて、その人たちが頑張って引き上げていくってのが、例えば福岡の例でもそうですけど、もともとある東京モデルの横の展開が効いてるんです。つまり、モデルができてる。

一方で、限界集落は地域資産をいかにブランディングして高く売るか、みたいなところが注目を浴びてて、海士町しかり、西粟倉しかりで、これもモデルができてる。

でも、10万人から20万人ぐらいの都市の規模のモデルってほとんどなくて、全然効果も出ないし判りにくいから、メディアにも取り上げられにくいんです。

いま地方創生のものってメディアに取り上げられてるのは、そこに判りやすい課題があって、劇的に改善するから取り上げられるんですけど、ここぐらいの規模の街って行政も動かしにくくて、要するに尖った政策がしにくいんですね。

長野で言うと、小布施は小さい街だからトップダウンが効くんですけど、16万人ぐらいになると街全体の均衡が働いてあまりアンバランスな政策が取りにくいので、非常に再生しにくいんです。

だけど、10万人から20万人ぐらいの都市が支えてる限界集落ってのが、実は周りにたくさんあって、基本的にその中核都市がなくなったらその集落もなくっちゃうわけですよ。西粟倉も中核都市が近くにあって支えてる、そこがなくなったらなくなるわけですね。

だから、中核都市を叩かないといけない。10年、20年のスパンで考えると、そこがアキレス腱になるだろうと思ってるんですね。

ぼくらは上田でそのモデルを作って、そのモデルが横に展開していってほしいな、と思ってて、だからいま、「ハナラボ」をやってると言っていいと思います。そのモデル化に向けていろいろ整えてるっていうのが、いまのフェーズですかね。

その中途半端な街は全国にたくさんあって、それがひとつの再生の手法として定着したらいいなと思ってます。

随分スケールが大きいように聞こえるかもしれないが、井上さんの言葉は、コワーキングが本来この社会において果たすべき役割について、正鵠を射ている。

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なんですかね、ぼくらはその、コワーキングという機能を使いながら、地域の課題の解決をしている、というような意味合いのほうが判りやすいかもしれないですね。

そう。本来、コワーキングはローカル経済を駆動するエンジンであり、地域の課題解決のためのひとつの方法論として、その機能は有効に活用できるはずだ。ただ、フリーランサーの「作業場」だけではあまりに芸がないし、社会に対する貢献度も低い。

行政がコワーキングスペースを活用しがいがあるという手法を我々が見せてきたので、そういう支援に積極的だっていうところはありますね。
(伊藤注:助成金のことを指している)

ぼくらは、施設整備とかに税金を使うことは厭わない、そのかわり、もう一回TAXに戻ってくる仕組みだとか、そういうモデルであるべきだっていう思想はかなり強く持ってますね。

そういう意味では、ぼくらは地方でのコワーキングの最先端だと思います、たぶん。(笑)

いや、まぎれもなく最先端だろう。そして、その思想が地方から出現していることには、注意を払っておきたい。地方行政は、積極的にコワーキングを使うべきなのだ。そして、それは企業も同じだ。

(地方の企業は)相対的に、やっぱり歳を取ってきているというのが辛いですよね。新しく切り替わらないから。もちろん、若い企業もあるんですけど、地方って企業同士の結び付きが強くてバランスを取ろうとするから、だからなかなか簡単には切り替わらないんですよ。さっき、尖った政策ができないって言いましたけど、民間同士でもお付き合いとかあるので、なかなか難しいところが実際見ててもあるなと思います。

でもまあ、そこでコワーキングスペースが「核」になって、そこを解いていくっていうのはある程度できるかなと思ってますね。モデルになるまでに潰れないようにしないといけないんですけど。(笑)

その「核」として地元企業のコラボを取り持つなど、「ハナラボ」は地域の産業振興に真剣に取り組んでいる。

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よく考えると、起業家にしろ、働く女性にしろ、企業にしろ、これらは地域にもともとあるリソースであり、コワーキングが担っているのはその再編成のところとも言える。従来のそれとは違う新しい評価軸で組み直したとき、新しい価値を生み出すことができる。コワーキングはそのための文字通り「核」となり得る。

「(ぼくらがやっているのは)20万人から30万人までの都市には通用するモデルだと思いますよ。大変ではありますけど」と、井上さんは謙遜しながらも自信を覗かせる。事実、その規模の街は日本中いたるところにある。ぜひ、このモデルを参考にされることを強くお勧めする。

地方創生は、実は地方のための課題ではない、日本全体の課題だ。少子高齢化による人口減少が加速度的に進んでいく地方は、そのままこれからの日本の行方を暗示(あるいは、明示)している。そういう意味では、地方こそが日本の最先端だと言って差し支えない。むしろ大都市圏にあっては、目まぐるしく毎日が転回するあまり目に入らないのではないかと危惧する。悲観論ではなくて、現実を見据えた方策が必要な次元に、いま我々はいる。

自分の仕事仲間づくりとしてコワーキングをはじめた井上さんの視線は、しかし、さらにもっと先を見ているようだ。

ぼくはまだ、最初にコワーキングを作った目的の「道半ば」なんですよ。これは本来自分のやりたいことを実現するためのネットワークづくりなんです。それを実現するためには、叩かなくてはいけない地域課題がたくさんあって、それをいま叩いている途中です。

モノゴトには順番がある。彼のやりたいことへの道のりは長いようだが、これまで同様、着実に目標に近づいていくことだろう。

インタビューを終えて、夜はBBQだった。暮れゆく信州の空を見ながら、ふと考えた。ぼくの地域の課題は、いま、誰が叩いているのだろう? そして、あなたの地域では?

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HanaLab.TOKIDA

〒386-0018 長野県上田市常田2-27-17 FUJIMOTO2F
TEL. 0268-71-7322

・フリー会員(個人) 15,000円 / 月
・フリー会員(企業・団体) 20,000円 / 月
・個ブース会員(個人利用) 30,000円 / 月
・個ブース会員(複数人利用) 40,000-50,000円 / 月

HanaLab.UNNO

〒386-0012 長野県上田市中央2-10-15 千曲錦ビル
TEL. 0268-71-7322

・フリー会員(個人) 15,000円 / 月
・フリー会員(企業・団体) 20,000円 / 月
・シェアオフィス 150,000円〜 / 月

HanaLab.CAMP

〒386-0033 長野県上田市御所583
TEL. 0268-71-7322

・非会員 カフェにて1オーダー / 日
・フリー会員(個人) 15,000円 / 月
・フリー会員(企業・団体) 20,000円 / 月
・個ブース会員(個人利用) 30,000円 / 月
・個ブース会員(複数人利用) 40,000-50,000円 / 月
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