【2018年版】WebサイトへのCMS導入前にしっかり比較しよう
そもそもCMSとは?
CMSは、サイト内のWebページ、文章、画像などを効率良く管理するための仕組みを提供するソフトウェアのことで、ContentsManagementSystem(コンテンツマネジメントシステム)の頭文字を取った略称です。
「Webブラウザから更新・編集管理ができる」というのがCMSを定義する主たる要件です。狭義には「Webサイトの管理をブラウザから行える仕組み」なのですが、広義には、FacebookやTwitterといったSNS、InstagramやPinterest、Flickrといった画像投稿サイト、YoutubeやVimeoといった動画投稿サイトなどもCMSの定義に含まれます。
ここでは、あくまで「Webサイト向け」のCMSに絞り、どのようなWebサイト制作にどのCMSが向いているのか、という点から比較してみたいと思います。
ブログ系CMSならMovableTypeかWordPress
MovableType
MovableType(ムーバブルタイプ)は、2001年からSix apart (シックス・アパート)社が開発・提供をスタートさせた、ブログという概念を形造ったエポックメイキングなCMSです。略してMT(エムティー)などとも呼ばれています。
MovabalTypeは、Perlとリレーショナルデータベースで動作し、すべてのページを静的なHTMLで出力することができます。そのため、閲覧時のスピードが速いのが特長です。
開発当時(〜ver.2.6)までは無料で公開されていましたが、ver3以降は商用CMSとなり、商用利用にはライセンス契約が必要となりました。現在のver6は、1サイト9万円〜のライセンス費用がかかります。
MovableTypeのメリット
MovableTypeは商用CMSということで、開発元がはっきりしている安心感から、2000年代中頃から日本の企業サイトに導入するCMSとして多くの企業が採用。制作会社も、MTタグと呼ばれる記法さえ会得すれば、通常のHTML制作の延長線上で制作することができます。
MovableTypeのデメリット
日本におけるCMSシェアとしては、一時盛り上がりを見せていましたが、後述するWordPressにシェアを奪われ、現在は縮小傾向です。制作会社もMovableTypeを売りにするところは減ってきている傾向にあり、制作会社を探すのは難しくなってきました。
MovableyTypeはバージョンによって使えるプラグインが異なったり、構築手法が変わったりします。過去バージョンからのバージョンアップやリニューアルは、かなり工数がかかったりするので、注意が必要です。
2018年のMovable Type動向
2018年初頭には、最新バージョンの7がリリースされる予定です。
MovableTypeがマッチするのはこんなサイト
- 閲覧速度が求められる
- クライアントからの信頼感が求められる
- ライセンス費用を予算に含めることができる、その稟議を通すことができる
シックス・アパートの提供するオウンドメディアは「six apartブログ」はこちら
WordPress
WordPressは、オープンソースのブログCMSです。MovableTypeと似た機能とインターフェースを持ちながら、ライセンス費用がかからないということで、2010年ごろからシェアを伸ばし始め、現在では、世界のCMSで第1位のシェアを占めています。
WordPressのメリット
WordPressのメリットは、なんといってもシェアの多さからくる情報量の多さでしょう。WordPressのインストールやテーマ作成、カスタマイズといった情報は、検索すれば世界中で公開されています。また、書籍の数も多く、初学者がCMSを入門するためのCMSとしても最適です。
多くの制作会社がWordPressの制作を手掛けており、市場競争の原理から、制作コストも他のCMSと比べ安価な傾向があります。予算の少ない案件では、真っ先に採用CMSの候補として名前があがるのもWordPressの特長ですね。
WordPressのデメリット
WordPressはシェアの多さと引き換えに、世界中からハッキング攻撃の対象となっています。初回インストール時点では、ハッキング対策については万全と言えず、ログインURLを変更したり、ログイン試行回数をブロックするカスタマイズを施したりする必要があるなど、安全に利用しようとすると、逆にコストがかかってしまう場合があります。
ブログ、または小規模でシンプルなサイトに向いています。巨大なサイトや、豊富な機能を持たせようとすると、大きなカスタマイズが必要です。そのようなプロジェクトでは、プラグインを入れすぎる傾向があり、安定性にかけたり、長期的にメンテナンスコストがかかりすぎる、ということにもつながります。
2018年のWordPress動向
バージョン5.0のリリースが予定されており、1月時点での進捗は、28%となっています。
WordPressがマッチするのはこんなサイト
- 予算が限られているが、CMSを導入したい
- 数十ページまでのサイトを安価にCMSにしたい
- セキュリティ対策がしっかり行える
EC系CMSは日本向けのサイトであればEC-CUBEから検討
ECとはE-Commerceの略で、インターネット上で商品やサービスを販売するサイトのことです。いわゆるAmazonや楽天もECサイトのひとつですが、こういったサイトを自社で運営することに特化したCMSが存在します。
EC-CUBE
EC-CUBEは、株式会社ロックオンが開発し、オープンソースのCMSとして公開されている、日本製のEC向けCMSです。日本において自社ECサイトを行う場合のデファクトスタンダードとなっており、これからECサイトを始めたい! という企業であれば、まず真っ先に検討候補にあがるでしょう。
EC-CUBEのメリット
日本製ということもあって、日本の商習慣(消費税や配送手段、日本独自の決済サービスモジュールなど)にマッチした機能があらかじめ実装されています。
開発の歴史も長く、インストールやカスタマイズのノウハウが蓄積されているので安心感があります。開発元も日本企業ということもあり、クライアントワークでも信頼感を得やすいです。また、日本国内の制作会社パートナー制度もあります。
EC-CUBEのデメリット
EC-CUBEは2.x系と3.x系という2つのバージョンが並存しています。2.x系は、これまでの開発系譜の流れを組むもの、3.x系は、新しくシステムを作り直したものとなります。開発ノウハウは2.x系はたくさん蓄積されていますが、3.x系はまだまだこれからといった段階で、必要な機能が足りてなかったり、そもそも追加プラグインが少なかったりという状況です。
2018年、EC-CUBEの動向
課題の多い3.x系をブラッシュアップし、バージョン3.1をリリースするべく開発が続けられています。
参考:株式会社ロックオン、EC-CUBE最新評価版「EC-CUBE 3.1α」を公開。最新版は機能もデザインもカスタマイズが簡単に。学習コスト・カスタマイズ工数の大幅減を目指す。(2017/03/01)
EC-CUBEがマッチするのはこんなサイト
- 自社ECを日本向けに行いたい
- コストはなるべく抑えたい
CS-Cart
CS-Cartは、ロシアで開発された、越境EC対応のEC向けCMSです。越境ECとは、自国から他国へ向けて販売することを前提とする機能です。海外の商習慣(送料、支払い方法など)に対応することが前提となります。
CS-Cartはライセンス費用が必要な商用CMSで、日本にも代理店が存在します。
CS-Cartのメリット
なんといっても、越境対応機能でしょう。日本国内に限定したECサイトとしても利用することができますが、現在EC市場で求められている越境機能のためには、CS-Cartを利用することも重要な選択肢となってきます。
また、マーケットプレイス版というパッケージでは、Amazonのようなマーケットプレイス型モールを実現することが可能です。自社でAmazonのようなサービスを行い、複数の他社企業や店舗を集めて、自社のモールで販売してもらい、手数料を徴収するようなサービスも作ることができます。
CS-Cartのデメリット
CS-Cartは日本語にも対応していますが、実装やカスタマイズの情報はEC-CUBEに比べると圧倒的に少なく、ほぼ皆無に近いのが実情です。実装には、日本代理店のカスタマーサポートを受けながら、自力で理解し実装できる能力が求められます。
また、WordPressに似たフックとフィルターを使ってカスタマイズを行う前提となるので、この仕組みに慣れていないと、カスタマイズは大変苦労します。
CS-Cartがマッチするのはこんなサイト
- 越境ECをしたい
- Amazonみたいなサイトを作りたい
- 技術力のあるスタッフをアサインできる
MagentoはECに限定したCMSの中では、世界で最もシェアがあるCMSパッケージです。CS-Cartと同じく、越境ECに対応しています。CS-Cartと異なるのは、Community版というオープンソースのパッケージがあるということです。
Magentoのメリット
オープンソース版があるということは、Magentoならライセンス費用をかけずに、越境ECが可能となります。従って、越境ECをやりたいEC事業者からは、まずその候補にあがるCMSと言えるでしょう。
Magentoのデメリット
一方で、Magentoは非常に複雑なCMSとしても知られています。世界中のEC事情に対応するため、あらゆる設定・パラメータの保存が必要であり、データベースのテーブル数も非常に多くなっています。
もともとECサイトは、ブログやその他のサイトと比べると、決済モジュールの組み込みや、オプション選択などから、システムのロジックが数段複雑であるのが普通ですが、それが各国の商習慣に合わせてカスタマイズする必要があるため、どうしても複雑で難易度の高いCMSとなってしまったようです。
Magentoを制作できる制作会社は、日本国内でも数社しかなく、これを扱えるエンジニアが圧倒的に不足しているのが実情です。越境ECには魅力的なCMSですが、構築にはかなり単価の高いエンジニアと工数を確保しておく必要があります。
Magentoがマッチするのはこんなサイト
- 越境ECをしたい
- ライセンス費用は払いたくない
- ずば抜けて高い技術力のあるスタッフをアサインできる
WooComerce
WooComerceは、WordPressにインストールする形の、ECプラグインです。このプラグインをインストールすれば、WordPressがECサイトになります。開発元であるAutomattic社がWooComerceを買収し、WooComerceは標準機能プラグインとなりました。
WooComerceのメリット
- WordPress公式という安心感
- 日本語化されている
- 日本人の開発者がいる
- WordPressと同じ操作感覚で扱える
WooComerceのデメリット
基礎的なシステムをWordPressに依存するため、WordPressのデメリットを引きずってしまう
WooComerceがマッチするのはこんなサイト
- 既にWordPressで運営しているサイトでECもしたい
- 管理画面は1つにしたい、複数のCMSをインストールしたくない
また、WooCommerce以外にも、WordPressにインストールするタイプのECプラグインはいくつか存在します。興味のある方は、調べてみると良いでしょう。
汎用/エンタープライズCMSではDrupalが世界シェア2位
汎用系CMSは、特定の目的によらず、一般的なCMSを構築するために開発されたものです。一般的とはいえ、様々な目的のために、追加機能をインストールしたり、カスタマイズを施すことで、ECサイトにもブログサイトにもなれる柔軟性を持っています。このようなことから、多彩な要件が求められる、エンタープライズ(大企業)向けのCMSとして採用されることが多いです。
Drupal
Drupalは、WordPressに次いで、世界のCMSシェア第2位のCMSです。ホワイトハウスのサイトや、毎日新聞のサイトなどにも採用され、大規模Webサイト向けのCMSとして有名です。オープンソースですので、世界中の開発者が参加し、開発が続けられています。
Drupalのメリット
- 採用事例がビッグネームなので、クライアントの信頼感は得やすい
- 大量のデータ・ページや大量のユーザーを管理することができる
Drupalのデメリット
- 開発はオープンソースコミュニティなので、明確な開発元としての企業が存在しない
- 国内でDrupalを制作できる企業がまだまだ少ない
Drupalがマッチするのはこんなサイト
- 大企業や大学といった、複数のサイトを1つのCMSで管理したい大規模サイト
- ユーザー登録が必要なポータルサイト
concrete5
concrete5は、中規模から大規模のサイト構築に適したCMSです。特に企業サイトや大学といった、管理者が複数存在するサイトに威力を発揮します。他のCMSと一線を画すのは、ドラッグアンドドロップで画像や文字段落を入れ替えたり、変更したりできる「編集モード」と呼ばれるWYSIWYG編集が可能な点です。直感的に操作できるので、PC操作に不慣れな人でも、簡単に更新できるのが特長です。
concrete5のメリット
- 操作感覚が直感的でわかりやすい
- 大量のページやデータ、ユーザーを扱える
- 開発元はアメリカの企業。日本法人もある。
- Drupalに比べると技術難易度は低い。WordPress相当。
- 日本国内の制作会社パートナー制度がある。
concrete5のデメリット
操作感覚は直感的だが、初期構築にはHTML/CSS/JavaScript/PHPやデータベースの知識が必要
WordPressに比較すると、情報量がまだまだ少ない
快適な動作のためには、ある程度のサーバースペックが必要。
2018年のconcrete5動向
2017年末に、最新バージョンの8.3.0がリリースされました。これまでになかったイベント機能・カレンダー機能などが実装され、今後も既存バージョンにはなかった新しい機能が追加されていくものと思われます。
concrete5がマッチするのはこんなサイト
- 大企業や大学といった、複数のサイトを1つのCMSで管理したい大規模サイト
- ユーザー登録が必要なポータルサイト
- 簡単な更新操作が求められるサイト
baserCMS
baserCMSは、日本人が開発したコーポレートサイト向けのCMSです。操作感覚はWordPressに似ていますが、ブログ系とは違い、各ページ単位でコンテンツを管理するので、更新管理などはわかりやすいと言われています。
baserCMSのメリット
- 日本の中小企業コーポレートサイトに最適
- SQLiteでも動作するので、安価なサーバーでも動作可能
- 日本製なので、ドキュメントも日本語で習得しやすい
- 制作会社のパートナー制度がある
baserCMSのデメリット
- WordPressと比較すると、情報やノウハウはまだまだ少ない
- CakePHPというフレームワークに依存している
- 標準機能以外のカスタマイズには、CakePHPの知識が必要
baserCMSがマッチするのはこんなサイト
- 中小企業のコーポレートサイト
- 商店・飲食店・クリニックなど
まとめ:目的に応じたCMSを選択して、快適な更新環境を
いかがでしたか? ひとくちにCMSといっても、用途に合わせて色々な種類があることがお分かりいただけたと思います。
CMSによって得意分野や求めるスペックなどは様々です。特にサイト規模や目的に応じて得意分野が異なるので、選択を間違えると、当初想定していなかったトラブルに悩まされることもあります。
過剰に考える必要はありませんが、CMSを導入するときは、まずそのサイトに必要な機能や要件が何であるかを洗い出し、それにマッチしたCMSを選択しましょう。