実例に見るテレワーク導入企業の概要とその効果

実例に見るテレワーク導入企業の概要とその効果

時代の先を読んでいる企業はすでに導入を始めている、テレワーク。これまでのところ、どんな企業が導入し、どういう効果を産んでいるのか。今回は総務省発表の「テレワーク先駆者百選」に選出された企業および自治体の中からいくつか事例をあげて、規模、業種に関わりなくテレワーク導入が進んでいる様子をご紹介する。

サイボウズ株式会社 

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業種:情報通信業 
従業員数:約500名 
事業概要:グループウェアの開発、販売、運用

「テレワーク導入・拡大の経緯」

同社が提供するクラウド型グループウェア(サイボウズ)のテレワークでの活用を立証するための実地検証も兼ね、以下の3つの目的で導入。

1.業務効率向上
2.雇用機会創出
3.ワークライフバランス支援

「テレワークの概要・特徴」

実施対象者は全社・全職種とし、社内ルールに従った事前申請によりテレワーク実施が可能。また本人や家族の突発的な体調不良等により在宅勤務を余儀なくされる場合は「ウルトラワーク」(※)としてテレワークが実施できる。
テレワークの場所は自宅に限らず、カフェ、帰省中の実家など制限なし。気になる情報セキュリティは、社内ネットワークへのアクセス証明書がインストールされたIT端末での業務となる。

※ウルトラワーク
選択した働き方から異なる働き方を、「単発(総労働時間のうち10%程度)」ですること。従来の在宅勤務勤務、時差出勤を含み、「チーム」「個人」両方の「生産性向上」を目的に実施。同社では2012年から実施している。ただし、概ね1ヶ月を超えて、ウルトラワークが頻発する場合は、基本となる働き方を変更する。

「テレワーク導入の効果」

BCP(非常時における事業継続計画のこと。Business continuity planningの略)の効果として、東日本大震災時にちょうど決算を迎えていた部署の関係者ほぼ全員が、テレワークにより業務を遂行出来た。また、災害や人身事故などによる交通マヒの際には出社を控えて社外で業務を行うことが可能になった。

また、家族のサポートや止むを得ず長期休職する時でも、多様な働き方で対応が可能。このことにより採用に関しての応募は年々増加傾向にある。なお同社は、テレワークを含めた多様な働き方を実践することで、かつて28%あった離職率が4%以下に減少した実績を持つ。

こうした実績が評価され、同社は2015年に「第15回テレワーク推進賞」、2018年には「働きがいのある会社 女性ランキング」 2年連続1位を獲得するなど受賞歴も数多い。

サイボウズでは、「100人いたら100通りの働き方がある」という考えのもと、「制度」「ツール」「風土」の3つの要件を前提に、メンバーそれぞれが望む働き方を実現できるようさまざまな制度が整備されており、テレワークはそのひとつだ。他には、「最長6年間の育児・介護休暇制度(2006年〜)」、「育自分休暇制度(2012年~)」、「副業許可(2012年~)」、「子連れ出勤制度(2014年~)」などがあり、社長自ら育休を取るなど、まさに多様な働き方を実行できる環境づくりに余念がない。

同社が公開している「ワークスタイル」のページには、これらの参考となる情報が多いのでぜひ参照されたい。

なお、同社社長の青野慶久氏には自社での実践から『チームのことだけ、考えた。――サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったか 』の著作がある。

近著は、さらに深掘りした働き方論が展開される『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』。テレワークをはじめ新しい働き方の導入を検討されているなら、こちらも一読をお薦めする。

ソニックガーデン 

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業種:情報通信業 
従業員数:約20名(非公表) 
事業概要:オリジナルソフトウェアの開発、ウェブアプリの開発受託

「テレワークの導入・拡大の経緯」

自社開発のバーチャルオフィスツール「Remotty(リモティ)」(https://www.remotty.net/)の運用開始とともに当ツールおよび各種ITツールを組みあわせ、オフィスワークと同等の環境を作り出すことに成功。テレワークのインフラの充実により、オフィス遠隔地の応募者の採用が円滑になり、通勤圏の社員においても育児など各自の状況に合わせて在宅勤務を活用している。

「テレワークの概要・特徴」

オフィスに出社するかどうかを問わず、バーチャルオフィスツールRemottyにログインすることを「出社」としている。PC からログインして作業できる環境であれば自宅、コワーキングスペース、出張先、帰省先など場所に制約がない。
また、業種による制約や週に何日までのような日数に関する制約もない。オフィスに勤務してもRemottyへのログインが義務付けられており、重要なコミュニケーションは全てRemottyを通じて行うなどオフィスワークとテレワーク間の情報格差がなく、対等な関係を構築している。

「テレワーク導入の効果」

テレワーク勤務を可能としたところ、テレワーク前提の応募者が増加し、その半数がテレワーク前提となっている。また、地方在住の社員も半数近くになり、テレワークの導入によって優秀な人材を全国から採用することが可能となった。
ワークライフバランスに関しては全社員の半数以上が小学生以下の子供をもつ(すべて男性)が、仕事と子育てを両立できている。テレワーク活用で、通勤時間を短縮し、必要に応じて家事や保育園への送迎などに有効活用することが可能となった。
通勤の時間的・体力的・精神的・経済的負担の軽減効果は大きく、概算で月間社員一人当たり約3日分(1日8時間)の通勤負担が軽減された。
日常的にオンラインで会議を行うがオフィスの会議と異なり、人数や時間帯に制約がなく、空き状況の確認や予約、移動のための時間が大幅に削減された。

なお、同社代表の倉貫義人氏は、自社でのテレワーク実践をもとに『リモートチームでうまくいく』の著作がある。 

明治安田生命保険相互会社 

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業種:金融・保険業 
従業員数:41,000名 
事業概要:生命保険業、資産運用

「テレワークの導入・拡大の経緯」

同社の中期経営計画、および従業員意識調査でのワークライフバランスの重要性からテレワークを導入。先行実施していたモバイルワークのノウハウを継承している。

「テレワークの概要・特徴」

まず本社組織へのスムーズなテレワーク導入のため、管理監督者のテレワーク理解促進への取り組みを実施した。実施にあたっては、モバイルワークに使用する営業用端末を通じて、蓄積されたセキュリティ対策のノウハウを活用している。
また、テレワークの終日・半日利用に加え部分利用も可とし、柔軟な利用を推進したことから利用率も向上した。さらに、社有貸出端末のみでなく、自宅の個人端末の利用も可とするシステムを開発した。

「テレワーク導入の効果」

テレワーク導入による通勤時間の軽減や、柔軟な勤務が可能となることから、家庭と仕事の両立がしやすくなりワークライフバランスが改善された。また、オフィス勤務だけでなく自宅・出張先での業務が可能となったため空き時間の有効活用やオフィス業務とテレワーク業務を切り分ける等、業務の効率化・生産性の向上が実現した。
実施者の実に約8割が業務が効率化したと回答している。効率的な働き方、多様な働き方、業務プロセスの見直しのすべてに関わる取り組みとしてテレワークを推進し働き方の質の向上に貢献した。なお、テレワーク導入後、同社本社中堅スタッフの法定外・時間外勤務時間は、前年度比約20%に軽減している。

株式会社ありがとうファーム 

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業種:医療・福祉 
従業員数:88名 
事業概要:就労継続支援A型事業所

「テレワークの導入・拡大の経緯」

障がい者を雇用し業務を行っている就労継続支援A型事業所の同社の主な業務は、障がい者によるイラスト・編み物・アクセサリーの制作販売だ。
テレワーク対象労働者は主に精神障害を患い、対人緊張・自閉症・幻覚・幻聴・うつ・パニック障害などから通勤困難者が多いが、能力的には優れ、健常者と比べて同等あるいはそれ以上である。
通勤が難しいために収入も得られず生活困窮に陥ることもあったが、テレワークの導入によりほとんどの対象者が皆勤に近い勤務状況にまで改善されている。

「テレワークの概要・特徴」

パソコンでのデータ入力やプログラミング、WEBページ制作、更新などが主な業務であったテレワークにハンドメイドという職種を取り入れ、今までテレワークとは無関係だった人も仕事を続けていく事が可能となった。
テレワーク用の機器にはパソコンとスマホ、タブレットを活用。スカイプで勤怠管理と制作物の写真の評価をする他、テレビ電話機能で緊急対応や細かな質問への回答を行う。テレワーカー側はパソコンを使用せず、スマホのスカイプアプリを主に利用する事で機器操作の労力を軽減し、かつ初期費用が削減できている。

「テレワーク導入の効果」

<> 就労者の約3割が会社から通勤時間1時間以上の遠隔地に居住するテレワーク利用者であり、これまで雇用は不可能と思われた優秀な人材を雇用、確保できた。
在宅勤務であるため欠勤が減りテレワーク利用者の収入(工賃)も向上、生活の安定から精神面の安定体調の改善が見られ、ひいては生産性の向上につながっている。
全国の障がい者740万人のうち精神障がい者が320万人、身体障がい者が350万人だが、その中には施設での就労はできないが能力は高いとされる者も数多く存在すると思われる。そうした人材にテレワークでスポットを当てることが可能となる。

向洋電機土木株式会社 

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業種:建設業 
従業員数:26名 
事業概要:電気設備設計・施工

「テレワークの導入・拡大の経緯」

ワークライフバランスの充実が会社方針の「CS(顧客満足)」、「ES(従業員満足)」、「FS(家族満足)」に必要と考え、介護や育児の問題を抱える社員のフォロー、移動時間の減少による社員の精神面・体力面での損耗の削減、遠距離社員間や緊急時のコミュニケーション手段の確立のため、社員と会社双方にメリットが出る経営戦略の一つとして導入運営している。

「テレワークの概要・特徴」

グループウェアなどのパッケージングシステムを利用せず、フリーソフトや自社開発ソフトなどを連携させた独自の運用形態で実施し、利用者には同スペック同ソフトをインストールしたスマホとモバイルPCを配布した。
一方で、BYOD(Bring your own device)を完全禁止した。社内サーバとクラウドサーバを併用し、ファイルのセキュリティランクと各社員の権限ランク、接続権ランクを設定し、併せて接続ルールと情報セキュリティ管理を実施した。使用場所は社内、自宅、工事現場等の固定箇所とし、指定された場所以外での使用を制限している。

「テレワーク導入の効果」

テレワーク導入前の平成20年度と導入後の平成26年度の固定経費を比較すると、社員が4名増えたにも関わらず、ガソリン利用量が34,000リットルから31,800リットルに、本社電力が32,000Kwhから25,500Kwhに、労働時間平均が2,100時間から1,850時間になり、移動時間と労働時間の減少により無事故・無違反を達成、車両の任意保険が70%減少となった。
これら削減された固定経費を設備投資にまわし、より働きやすい会社の実現を目指している。テレワーク運用にあたり、社員との面談等を進めてライフプラン作成に基づくキャリアプランも作成するなど、より社員との信頼関係構築と帰属意識向上を得ることが出来た。

佐賀県 

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業種:公務 
従業員数:約4,000名 
事業概要:地方自治

「テレワークの導入・拡大の経緯」

平成20年1月から全国に先駆けて在宅勤務制度を導入。当初は育児・介護中の職員が在宅勤務の対象だったが、新型インフルエンザ業務継続計画策定を契機に、平成22年10月から誰でも実施できるよう見直すも利用者が少なく、在宅勤務が浸透するには至らなかった。
平成25年8月から、管理職を対象に週一回以上のテレワークを促し、県内外に13か所のサテライトオフィスを設置し、テレワーク推進のための実証事業を一斉展開した。平成26年10月からは、タブレット端末やテレワーク基盤を大幅に増強し、全職員を対象としたテレワークを全庁的に展開するに至る。

「テレワークの概要・特徴」

テレワークを核としたワークスタイル変革を目指し、それを通して県民への分かりやすい説明や迅速な対応など行政サービスが向上、災害時等の業務継続、業務の効率化、ワークライフバランスの実現を目指す。
テレワークの実施にあたって、育児や介護といった制限をなくし、「特定の誰かのためでなく、これからのふつうの働き方」とし、全職員を対象に在宅勤務、サテライト勤務、モバイルワークを実施。手続き面においても煩雑な紙書類のやり取りを排除し、所属長に電子申請すればテレワークを可能とするなど柔軟性・迅速性に配慮した。

「テレワーク導入の効果」

・在宅勤務・サテライト勤務について
仕事を◯時までに完了させるという意識が高まり、業務効率が格段に向上した。また、出張の空き時間に最寄りのサテライトオフィスを活用するなど、職場に戻る時間を業務に充てることが可能となった。
また、育児や介護を理由に仕事を辞める必要がなくなったのが大きい。
災害時、幼稚園や保育園が休みになった場合にも、在宅勤務を活用することで仕事を休まずに済んだ他、台風や大雪によって九州の公共交通機関が麻痺する中でも、テレワークを活用して業務を継続することができた。

・モバイルワークについて
出先でも保存した文書やデータを活用でき、県民からの問い合わせにも詳しい職員との連携で現場で解決できた。災害情報を県のホームページに掲載する際、自宅からでも情報を掲載できるようになり、県民に迅速な情報提供が可能になった。

まとめ

今回は総務省発表の「テレワーク先駆者百選」に選出された企業および自治体の中からご紹介したが、各省庁が連携してさまざまなテレワーク導入のための施策が実行される中、機敏に時代の変化を読み取り、積極的に新しい働き方のための環境整備に努めた組織は、着実に成果を上げている。
働く人たちを取り巻く環境も、家族のあり方ひとつをとっても20世紀とはまるで違ってきている。そこに対応する制度もやはり変革が求められて当然だろう。とりわけ、ここ数年のうちに労働人口の半分を占めるミレニアル世代には「働き方=生き方」の意識が高い。こうした世代の人材を活かすことは組織の存続、成長にとって不可欠だ。
テレワークにはまだまだ課題もあるが、まさにサイボウズの掲げる「制度」「ツール」「風土」の3つの要件をもとに全員で取り組むことで、さらに多くの成功事例が生まれることが期待される。

【出典】
・総務省 平成27年度テレワーク先駆者百選 取り組み事例(PDF)
・総務省 平成28年度 テレワーク先駆者百選 総務大臣賞事例のご紹介(PDF)
・総務省 平成28年度 テレワーク先駆者百選 取り組み事例(PDF)

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